「事実婚」とは、法律的な手続きを経ずに、恋人同士やパートナー同士が共同生活を営むことを指します。最近では、法律婚にこだわらないカップルが増えており、事実婚を選ぶ人も多くなっています。そこで今回は、事実婚のメリット・デメリット、手続き、事前に話し合っておきたいことにについて詳しく解説します。事実婚のメリット苗字を変える必要がなく、面倒な手続きも不要「今までずっと使ってきた愛着のある名前を変えたくない」という人も多いのではないでしょうか。事実婚では夫婦別姓でいられるため、慣れ親しんだ苗字を維持することができます。入籍をしなければ、姓の変更に伴って必要となる、面倒な手続きから解放されるのも大きなメリットです。入籍すると下記の手続きが発生しますが、運転免許証の変更パスポートの変更銀行口座・クレジットカードなどの名義変更マイナンバーの変更クレジットカードの変更保険の契約者、被保険者の姓の変更、受取人の変更携帯電話の名義変更事実婚であれば不要になります。また、婚姻後も旧姓を使い続けられる会社も多くありますが、中には旧姓使用が認められていない会社もあるよう。改姓によって自分のキャリアが途切れることを避けるために、あえて事実婚を選ぶケースもあります。法律に縛られず、関係性はお互いの気持ち次第事実婚は、法律的な手続きを伴わないため、お互いの気持ちだけで成り立っている関係です。そのため、一緒にいることも離れることも自由であり、お互いが束縛されることはありません。この点は、結婚とは異なる魅力の1つと言えます。離婚によって法的手続きが面倒だから一緒にいる、というケースは事実婚ではまれです。夫婦関係において法的な手続きが関与しないため、お互いの気持ちや相性によって判断が下されるため、より自分たちの気持ちを関係性に反映しやすいと言えます。関係が終わっても戸籍に離婚の記録が残らない結婚した夫婦が離婚する場合、離婚届を出さなければいけません。この届け出によって、戸籍には「離婚した」という記録が残されます。しかし、事実婚であれば、最初から入籍していないため、戸籍に離婚の記録が残ることはありません。また、離婚に必要な手続きも省略することができます。特に、一度離婚を経験した人にとっては、このような事実婚の「リスクの低さ」はメリットと感じるかもしれません。相手の家族と距離を保ちやすい「結婚したら親族付き合いが面倒くさそう」と感じる人もいるかもしれません。法律婚の場合、相手の親や兄弟、親族と姻族関係になるので、冠婚葬祭やお盆、正月などの親族の集まりに参加しなければいけない場合も。事実婚であれば戸籍上はお互いに他人扱いなので、親戚付き合いから距離を保ちやすく、ふたりらしい関係性を築きやすいと言えます。>>>苗字の希望や子ども、お金のことについてカップルで話し合える「ふたり会議」の詳細を見る事実婚のデメリット法律婚よりも税金の負担が大きくなることも法律婚の場合、配偶者控除や扶養控除など、税金の控除を受けることができますが、事実婚の場合は受けることができません。また、年金の受給額も法律婚と比較して低くなることがあります。法律婚であれば、配偶者や扶養の条件を満たす場合に受けられる控除がありますが、事実婚ではそれらの控除を受けられないので、税金の負担が大きくなることがあるので要注意です。子どもを持つ場合は、手続きが必要事実婚で子供を授かった場合、入籍していないために、父親との法的な親子関係を認める手続きが必要となります。具体的には、父親が「認知届」を出す必要があります。これによって、子供には父親からの扶養や相続を受ける権利が認められます。また、親権にも注意が必要です。法律婚の場合は両親が共同親権者になりますが、事実婚の場合は母親が親権者になることが決まっています。このように、事実婚で子供を授かった場合は、法律婚とは異なる手続きやルールに従う必要があることに注意しましょう。遺産の相続や生命保険の受け取りができない事実婚の場合、法的な契約がないため、相手が亡くなった場合に遺産の相続や生命保険の受け取りができません。遺産を残したい場合は、「遺言書」を作成する必要がありますが、遺言によって相続できたとしても、「相続税」がかかります。また、事実婚の結婚相手を受取人に指定することができる保険会社もあるようですが、受取人になっても、生命保険料控除が適用されなかったり、受け取りの際に相続税を課税されたりすることがあるため、法律婚より税制面で不利な場合があります。家族関係を証明しにくい場合も事実婚の場合、家族関係を証明する手段が限られているため、実家の親戚や役所での手続きなどが煩雑になることがあります。また、相手の病気や怪我で入院した場合、入籍していれば親族として入院や手術の同意書にサインできるけれども、事実婚の場合はできない、という場合もあるようです。事実婚を選ぶなら、確認しておきたい手続き事実婚を選ぶ場合は、以下の手続きについて確認しておくことが重要です。世帯変更届の提出事実婚を始めた場合は、世帯変更届を提出する必要があります。住民票をふたりで同一の世帯にして、世帯主との「続柄」を「妻or夫(未届)」と記載してもらうと、様々な手続きがスムーズになります。パートナーシップ制度の利用「パートナーシップ制度」とは、同性カップルに対して、自治体が婚姻と同等の関係であることを認める制度です。自治体によっては、事実婚カップルも対象としている場合があります。パートナーシップ宣誓書を提出することで、契約や各種手続きがスムーズになる場合も。2023年4月現在、全国で300近い自治体がパートナーシップ制度を導入しており*、今後も導入する自治体が増えることが期待されています。参考:Marriage For All Japan 日本のパートナーシップ制度公正証書の作成公正証書とは、法務大臣によって任命された公務員である「公証人」が作成する公文書のことです。作成費用は内容によって異なりますが、2万円~10万円ほど。公正証書を作成することで、相手との間での財産分与や生活費の支払いなどを明確にすることができるほか、相手の病気や怪我での入院時など、家族としての扱いを受けるためにも有効です。事前に公正証書を作成しておくことで、法律婚と同じような権利関係を築けたり、トラブルの防止にもつながります。事実婚で後悔しないために。前もって話し合っておきたいこと事実婚を始める前に、以下のことについて話し合っておくことが重要です。理想の結婚生活・夫婦像について事実婚でも、お互いの理想の夫婦像や、家事や生活費の分担など、一緒に家庭運営をしていくパートナーとしての責任を共有することが大切です。どんな夫婦になりたい?法律婚に移行したくなったらどうする?子どもができたらどうする?など、お互いの結婚観や夫婦の義務について確認しておきましょう。この記事もチェック👇結婚前に話し合うべき8つのテーマ。話し合うタイミングやコツも紹介!お金のこと事実婚を始める前に、お金のことについても話し合うことが重要です。お金の管理はどうやって行う?生活費はどんな比率で分担する?お互いの収入はオープンにしたい?ふたりの共通口座を作りたい?など。事実婚では「法律婚に比べて税制面で不利がある」「ローンが組めない場合がある」という点を忘れないようにしましょう。この記事もチェック👇同棲のお金の管理どうしてる?揉めないコツと上手な管理方法法律婚に移行する可能性の洗い出し将来、法律婚に切り替える可能性があるとしたらどんな場合なのか、あらかじめ話し合っておくのもおすすめです。「子どもが生まれたら法律婚」「どちらかが大病をしたら法律婚」といった、法律婚に切り替える可能性があるタイミングについて確認しましょう。法律婚であれば、子どもは法的に両親の子として認められ、入院時には配偶者として手術の同意や面会もスムーズに行えます。「事実婚を検討していること」をパートナーに伝えづらい時は?「事実婚も実は検討しているけど、パートナーに伝えづらい」「苗字を変えたくないことをなんて伝えたらいいんだろう」と悩んでいる方には、カップルで価値観をシェアできるアプリ「ふたり会議」がおすすめです。LINE上で結婚に関する質問に答えながら、苗字を変えたいか、変えたくないか、一緒に住むとしたら共通口座を作るかなど、お互いの結婚観を共有することができます。「ふたり会議の結婚編で"苗字は変えたい?"という質問があり、その時に"いいえ"と回答することで、事実婚にするか法律婚にするか話し合うきっかけになった」(28歳・女性)「苗字を変えたくないなら事実婚にするしかない、でも税制面で不利になるのがちょっとな……と不安を抱えていました。そんな時にふたり会議を行い、相手が"苗字を変えたい?"という質問に対して"はい"と回答していて、悩みが解消されました」(33歳・女性)事実婚について切り出すきっかけになったカップルが多くいるようです。>>>苗字の希望や子ども、お金のことについてカップルで話し合える「ふたり会議」の詳細を見る今すぐアプリをチェック👇ふたり会議 | LINEでできるカップルの質問アプリ〜楽しく価値観を共有〜まとめ結婚の形態が多様化していて、法律に縛られない関係を選ぶ人が増えています。事実婚は、気持ちだけでつながる自由な関係で、自立的なカップルにはぴったりです。しかし、法律婚と比べると、税金や相続の問題で不利な点があることも事実です。そこで、まずはふたりの理想の生活や人生設計について話し合い、事実婚で後悔しないように検討することが大切です。結婚には様々な選択肢がありますが、最終的にはふたりで相談し、自分たちに合った形を選ぶことが大切です。お互いを思いやる気持ちを忘れずに、幸せな未来を歩めることを願っています。